働く環境
考え方
エプソンは、女性や外国人、中途採用者、障がい者、高年齢者など、多様な人材を確保し、それぞれの力を発揮できる環境を整えています。こうした自律した多様な社員が、さまざまなライフステージの変化に適応しながら、それぞれのキャリア形成を実現できることを目指しています。
フレックスタイム制度や在宅勤務に加え、当社独自の法定を超えた短時間勤務制度や「健やか休暇」制度等により、働き方の柔軟性を生かし、育児・介護・療養・不妊治療と仕事の両立ができる環境づくりを行っています。また、職場におけるハラスメント防止や労働時間の適正化等、社員が健康で安全に働ける環境づくりに取り組んでいます。
働き方への取り組み
当社は、2004年に「私たちのめざす働きかた・働く風土」を定め、「すべての社員が、過重な労働がなく、心身の健康を維持・増進することにより、活性化し、やりがいをもって効率的に仕事をしている」という働き方の実現を通して、「会社も永続的に発展し、企業価値を向上している」Win-Winの関係を目指してきました。
さらに2017年より働きかた改革に取り組んでいます。第Ⅰ期(2017~2019年度)は、労働時間の適正化・長時間労働防止に優先的に取り組み、第Ⅱ期(2020~2022年度)は、働き方の多様化・選択肢の拡充として、全社員を対象にした在宅勤務の制度化・フレックスタイムのコアタイム廃止、育児事由での短時間勤務の適用年齢拡大(小学校6年生まで)などの制度拡充を進めてきました。
2023年度より第Ⅲ期(2023~25年度)として、社内研修などを通じて、社員の自律を前提とした制度運用の定着に向けて取り組んでいます。
主な施策
ねらい | 主な制度等 |
---|---|
働き方の選択肢拡充 |
・在宅勤務制度 ・時間単位年休 ・コアタイムレスフレックスタイム |
育児・介護・不妊治療等と仕事の両立 |
・出産・育児と仕事の両立支援 ・男性育休取得促進活動 ・不妊治療を行う社員への支援 ・介護と仕事の両立支援 ・健やか休暇制度 |
過重労働防止 |
・労働時間適正化への取り組み |
働き方の選択肢拡充
在宅勤務制度
2018年4月に導入した育児・介護期における在宅勤務制度は、ニーズを捉えながら対象者と実施場所を拡大しています。現在では、全社員が、実家や配偶者宅等、自宅以外の場所でも在宅勤務を行うことができる制度となっています。
一方、コロナ禍により在宅勤務制度が一気に進む中で認識された、対面コミュニケーションの重要性や組織運営上の課題も踏まえ、2023年9月に、最低週1回以上の出社を全社ガイドライン(目安)として設定し、その上で各職場の状況に応じて、組織の生産性・成果創出に向けて最適な形で在宅勤務を行うこととしています。
2024年9月には、在宅勤務の実施単位として終日・半日単位だけではなく、1分単位で在宅勤務を実施可能とする制度改定を行っています。
時間単位年休の制度化
2022年10月より、時間単位年休制度を導入しました。年間5日間を上限に、年次有給休暇を1時間単位で取得することができるようになりました。
コアタイムレスフレックスタイムの適用
2023年3月より、多くの社員に適用されているフレックスタイム制度におけるコアタイムを廃止しました。加えて、事由を問わず業務の中断が可能なため、より働く時間の柔軟性が高まりました。
育児、介護、治療と仕事の両立への取り組み
出産・育児と仕事の両立支援
自分の描くキャリアの実現に向けて、社員が性別に左右されず活躍できる環境創出を目的に、出産・育児の際にも男女の格差無く働くことができるよう、育児支援にも力を入れています。休暇、休職、短時間勤務など、育児を大切にしながら仕事と両立する制度を整備しています。
<育児休職取得者等の推移>
女性 | 女性の取得率 | 男性 | 男性の取得率 | |
---|---|---|---|---|
2024*1 | 41人 | 100% | 239人 | 91.6% |
2023*1 | 46人 | 97.9% | 208人 | 85.2% |
2022*1 | 38人 | 90.5% | 273人 | 97.2% |
2021*2,3 | 38人 | 100% | 131人 | 53.5% |
2020*2,3 | 37人 | 100% | 72人 | 30.8% |
2019*2,3 | 41人 | 100% | 61人 | 21.3% |
2018*2,3 | 35人 | 100% | 41人 | 13.6% |
*育児休職取得者等のデータは、セイコーエプソン(株)2025年3月31日現在
2022年度以降の算出について
*1 公表前事業年度において配偶者または本人が出産した労働者数に対する、公表前事業年度において育児休業等をした労働者数の割合
2021年度までの算出について
*2 当社独自の制度である健やか休暇を含めた人数
*3 育児休職取得者数/制度対象者数
(制度対象者:本人に子どもが生まれ、育児休職が取得可能になった者)
男性育休取得促進活動 (PAPA UPプロジェクト)
性別に関わらず公平に育児に関わり、仕事との両立ができる会社になることを目指し、会社全体で、男女ともに対象者全員が育休を取得することを目標に、「育児休職の取得が当たり前」の風土醸成と、育休取得促進活動に取り組んでいます。

主な活動 | 内容 |
---|---|
育休取得サポートツール |
育休の目的や時期・期間、家事の分担等を話し合う家族ミーティングシート 社会保険料免除シミュレーター |
周知活動 |
育休意向登録活動 育休制度周知シート 制度や手続きのほか、所得や評価等に関する説明イントラネットページの作成 本人、上司へのセミナー開催のほか、育休取得者との座談会 |
不妊治療を行う社員への支援
少子化の社会課題に対し、企業には不妊治療を受けながら働き続けられる職場環境の整備が求められています。当社でも不妊治療に取り組む社員が安心して仕事との両立ができるよう、2023年9月より休暇・休職の制度を拡充し、さらに2025年3月より、半日単位での休暇取得を可能としました。男性・女性に関わらず、不妊治療を受ける社員に利用されています。
<不妊治療に特化した支援制度>
制度 | 概要 |
---|---|
ライフサポート休暇 |
年度内に取得できる5日の特別休暇(有給)を付与。 1日または半日単位で分割して取得可能。 |
ライフサポート休職 |
3年度の期間に通算365日の休職を認める(分割可能) なお、3年後も治療を継続している場合は、改めて3年度の期間に通算365日の休職を認める。 |
介護と仕事の両立支援
高齢化が進み、家族の介護を行う社員も増えてきました。介護による離職を無くすことを目的に、当社では、以下のようなサポートをしています。
・ホームページを通して、介護に関する社内制度や介護保険制度などの情報発信
・事前に知識をつけ、突然発生する介護に慌てずに対応できることを狙いとした介護準備セミナーの実施
・社員が安心して介護に関する相談ができる窓口の設置
・介護と仕事の両立のための諸制度の整備(詳細は下表のとおり)
<介護支援の制度>
制度 | 概要 |
---|---|
介護休職 | 対象家族一人につき1年6カ月取得可能 |
介護短時間 |
利用開始から3年経過後の3月20日まで取得可能 以降も継続して介護が必要な状態であれば延長を認める |
介護のための所定外労働免除 | 所定就業時間を超える労働免除 |
介護のための時間外労働制限 | 1カ月24時間、1年150時間を超える時間外を制限 |
介護のための深夜業制限 | 深夜勤務の制限 |
介護休暇 | 対象家族が1人であれば5日/年、2人であれば10日/年の介護休暇(無給)取得可能 |
<介護休職取得者等の推移>
年度 | 介護休職 取得者数 |
介護短時間 制度実施者 |
---|---|---|
2024 | 5人 | 7人 |
2023 | 3人 | 4人 |
2022 | 2人 | 5人 |
2021 | 5人 | 6人 |
2020 | 2人 | 4人 |
2019 | 6人 | 4人 |
2018 | 2人 | 5人 |
*介護休職取得者等のデータは、セイコーエプソン(株)2025年3月31日現在
健やか休暇制度
前々年度からの年次有給休暇に残日数がある場合、60日を限度に積み立てることができる休暇で、本人のけがや病気、家族の介護・育児、中学3年生までの子どもの学校行事への参加を目的として取得できる、当社独自の休暇制度です。
(1998年3月21日制定)
労働時間の適正化
当社では、2017年より働きかた改革の一環として、また2022年4月に制定した中期健康管理施策「健康Action2025」において、重点分野の一つとして、労働時間の適正化・長時間労働防止・過重労働防止に取り組んでいます。具体的には、労働時間管理に関する運用マニュアルの周知・徹底による遵法対応に加え、入退場管理や在社時間管理による重点管理者のフォロー、また労働時間適正化のための啓発活動など、法令の遵守に留まらない様々な取り組みを行っています。
上記の活動を通じた労働時間適正化の実績と目標値
年間総実労働時間 2025年度目標:1,845時間

年次有給休暇制度
有給休暇取得日数 2025年度目標:20日(年次有給休暇以外の休暇取得含めて)

パワーハラスメント防止への取り組み
ハラスメント防止の方針
職場におけるハラスメントは、社員の個人としての人格や尊厳を不当に傷つける、社会的に許されない行為であり、会社にとっても職場秩序、業務遂行を阻害し、社会的評価にも影響を与える重要な問題です。エプソンは、企業行動原則、エプソングループ人権方針においてハラスメントの防止を掲げ、加えて、人的資本・健康経営本部長から、その根絶に向けた取り組みを、メッセージとして発信しています。
従業員相談対応の推進
エプソンは、公平で働きやすい職場環境の実現に向け、パワーハラスメントの防止と根絶を目的として、ハラスメント相談窓口を設置し相談対応を行っています。素性を明かしたくない従業員の心情に配慮し、匿名相談に対応できるよう、ハラスメントに関する相談の受付窓口を、2024年に開設した外部窓口に統合しました。ハラスメントに関する相談窓口は、通報情報を厳格に管理し、通報者への報復行為を禁止し、匿名性を確保して運用しています。
また、相談を扱う労務担当者のケア・レベルアップを目的に、事例対応の水平展開、法制度変更内容共有等を含めた研修も推進しています。
パワーハラスメント防止研修の実施
パワーハラスメント防止のため、セイコーエプソングループの関係会社含め、各階層に応じたパワーハラスメント防止研修を展開しています。
研修では、パワーハラスメントによる就業環境への悪影響と会社の考え方、姿勢のほか、パワーハラスメントの定義、正当な指導との違い、企業の法律上の責任、行為者に対する制裁処分や法律上の責任等の基礎的な内容に加え、経営層に対しては、パワーハラスメントのない組織作りを組織トップ自ら考える機会として、研修を実施しています。管理職層に対しては、パワーハラスメントが発生することによる影響の大きさを改めて周知した上で、事案の共有や参加者のディスカッションなどを通じ、必要な対策を考える機会としております。
毎年、一般者を含む全社員を対象としたeラーニング教育を実施しています。また、海外赴任者に対しても、現地責任者向け研修・赴任者向け研修を行うなど、階層や対象に応じた教育を推進しております。
これらに加えて、2021年度からは健康管理情報と連携した高ストレス職場への個別フォローや管理職層を対象とした相談窓口の設置など、個々の職場に合わせたきめ細かい対策を取ることにより、パワーハラスメントのない組織風土づくりを推進しています。
ハラスメント再発防止に向けて
ハラスメントなどを含めた人権侵害や労働に関連する相談事案は定期的に経営層に報告され、会社の対応を含め管理職へも共有するとともに、全社開示により注意喚起を行い、同様の事案の未然予防・再発防止に努めています。グループ会社へはハラスメントの重要事案が発生した場合はその報告を徹底しており、ここ数年特に報告漏れは発生していません。
アンガーマネジメント研修
パワーハラスメント防止のために、「アンガーマネジメント」が有効だと言われています。
怒りの感情と上手につきあうスキルを身に付け、怒りを上手にコントロールできるようになるために、2015年度より「アンガーマネジメント研修」を展開しています。怒りへのその場の対処や長期的な体質改善のスキルを身に付ける基礎編から、パワーハラスメントにならないコミュニケーションスキルを学ぶ叱り方教室など、経営層への展開を筆頭に、階層別・職場別・自己啓発など、2024年度末までで900講座を開催し、当社および国内関係会社延べ14,000人余りが受講しました。
これまでの取り組みが評価され、2023年6月に、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会主催の第1回「日本アンガーマネジメント経営賞」経営大賞を受賞しました。
Power Harassment Prevention Training/Anger Management Training (after 2015)

賃金管理
エプソンは、各国・地域の労働法規などに基づき、適切な賃金、諸手当、その他臨時に支払われる給与などの諸条件を、賃金規則などで定めています。また、「エプソングループ人権方針」において、雇用、業務、処遇に関し、機会均等と平等を推進し、いかなる差別待遇も行わないことを定めています。
日本国内については、法令に基づき雇用形態に関わらず同一労働同一賃金の原則に基づいた対応を行っており、賃金制度において、性別・年齢による格差はありません。男女の賃金格差は1983年に完全に廃止しています。
国内の正規従業員のうち一般社員層は、主として職務遂行能力に応じ処遇を決定する職能資格制度を、リーダー層には能力をベースとして、与えられた職務・果たしている役割のレベルをふまえ処遇する職務職能給制度を、また管理職には、役割の大きさで処遇を決定する役割等級制度を導入しています。なお、一般社員層、リーダー層の賃金については、賃金労使委員会を開催し、賃金水準および賃金制度の妥当性を労使で確認しています。
海外においては、国・地域ごとに、最低賃金、法定給付、超過勤務などに関する賃金関連法令を遵守した規則を定め、これに基づき算定・作成された賃金計算期間毎の賃金明細を通知したうえで、定められた所定の日に、従業員に直接、賃金を支給しています。
労使関係
エプソンは、エプソングループ人権方針において、各国・地域の法令に基づき、結社の自由および団体交渉の権利を尊重し、良好な労使関係を維持するため、労働者に必要な情報を提供し、誠実に協議・意見交換を行うこととしています。
当社は健全な労使関係のベースとなる会議体として、経営上の重要事項の労働組合への説明、および労働条件を変更する場合に労働組合との協議の場として労使協議会を設置しており、定期的に、また必要に応じ都度、労使協議を開催しています。さらに、労使協議に加え、より良い職場環境づくりに向け、労使双方で課題解決・議論することを目的として、働きかたや次世代支援、福利厚生、賃金、定年後再雇用、健康管理などについて労使委員会、安全衛生委員会などを設置しています。
以上に加え、当社では、より多くの社員と情報を直接共有し、会社と社員のコミュニケーションを促進するため、各事業部や本部機能において、経営層と社員との対話会や懇談会にも積極的に取り組んでいます。このような場を通じて経営の考えや思いを社員に伝え、また、社員からの声を直接確認することを実行しています。
* 全正規社員における労働組合加入率 86.3%
福利厚生
エプソンでは、国内グループを対象とした健康保険組合、確定給付・確定拠出年金、従業員持株会を通じた財産形成支援、社宅・独身アパートによる住居支援、懇親会補助・同好会などの余暇・コミュニケーション促進支援などのさまざまな福利厚生を提供しています。
エプソンは、これらの福利厚生制度を通じて、安心して仕事にとりくみ、豊かで健康的な生活が送れる環境を整備し、会社の発展・企業価値の向上と従業員の成長を支えています。
主な福利厚生制度(国内)
分野 | 制度の内容 | 正規社員 | 契約社員 | 派遣社員 |
---|---|---|---|---|
社会保険 | 健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険、労災保険 | 〇 | 〇 | ー |
年金 | 企業年金基金、確定拠出年金 | 〇 | ー | ー |
生活支援 | 通勤費補助、社員食堂・売店、ユニフォーム貸与 | 〇 | 〇 | △ |
余暇 | 懇親会補助、同好会 | 〇 | 〇 | 〇 |
総合サービス | 福利厚生パッケージサービス | 〇 | 〇 | 〇 |
自己啓発 | 通信教育・資格取得助成 | 〇 | 〇 | ー |
財産形成 | 財形貯蓄、従業員持株会 | 〇 | △ | ー |
住宅 | 社宅・独身アパート貸与 | 〇 | 〇 | ー |
健康・医療 | 健康管理室、企業内理療(マッサージ) | 〇 | 〇 | 〇 |
育児・介護 | 育児・介護に関わる休暇・休職・短時間勤務、在宅ケアサービス | 〇 | 〇 | ー |
その他 | 慶弔見舞金、永年勤続表彰、団体保険 など | 〇 | 〇 | ー |
〇:対象 △:一部対象 ー:対象外
健康保険(エプソン健康保険組合)
国内グループの約36,000人(被扶養者を含む)が加入しており、社員とご家族の病気・けがなどの医療費負担、給付金の支給や、疾病予防・健康づくりを支援しています。
企業年金基金、確定拠出年金
正規従業員を対象に、企業年金基金(確定給付企業年金)、確定拠出年金を導入しています。
企業年金基金は約15,000人が加入、確定拠出年金は約14,000人が加入しています。
同好会
社員が自主的に行う同好会活動で、サッカー、フットサル、バスケットボール、マラソン、卓球、バドミントン、ボウリング、弓道、剣道、山岳会、スキー、スノーボード、カーリング、e-Sports、ドローン、将棋、書道、技術研究、多様性研究、サウナなど、約40団体が活動しています。
福利厚生パッケージサービス
レジャー施設割引、飲食店クーポン、フィットネスジム利用、育児支援、自己啓発など様々なサービスが利用できます。
社員が集まり実施した懇親会への補助や、サンクスカードによるコミュニケーションも提供されており、社内コミュニケーションに活用されています。
従業員持株会
毎月一定金額を拠出して自社株を購入する制度で、国内グループの約6,000人が加入しています。
従業員持株会の保有株式は、大株主順位第5位(持株比率2.18%)となっています。
社宅・独身アパート
社員用住居グリーンフィールド、または、事業所の近隣でアパート等を借り上げ、新入社員や転勤、結婚等によって住居が必要となる社員へ貸与しています。