人材育成
考え方
経営戦略の実現・事業遂行のため、エプソンは、パーパス、エプソンウェイの浸透と、長期ビジョンに定めた事業の方向性の共有をベースとしながら、広い視野と高い専門性を持って変化に素早く対応し、お客様の立場に立って自立的・自律的にお客様価値を作り上げることのできる人材を必要としています。
長期の時間軸で「人が自律的にキャリアを形成し、成長し続ける会社」を目指し、業務を通じた育成(OJT)を基礎に、教育体系を整備して階層別や各種の専門教育を行っています。また、社員一人ひとりが内外の環境変化への対応力を高められるよう、リスキリング、ローテーション、社内公募制度等の挑戦の機会を提供しています。さらに、グローバル視点での最適なフォーメーション構築のため、グローバルに活躍できる人材の育成に取り組んでいます。
人材育成の取り組み
キャリア開発・成長支援の研修
エプソンは、長期の時間軸で「人が自律的にキャリアを形成し、成長し続ける会社」を目指しています。
社員一人ひとりのキャリア開発や成長支援のために「Will・Can・Must」のフレームワークを使った研修体系概念を作成しました。①年代別・階層別キャリア研修、②階層別研修、③スキル研修・リスキリング支援の大きく3つの研修カテゴリから構成され、研修や仕組みを「Will・Can・Must」にそれぞれつなげることで学びの連関が機能し、社員の納得感と成長意欲を高めることを狙いとしています。

①年代別・階層別キャリア研修
エプソンでは、人が育つ組織づくりに向けた取り組みを継続的に行い、達成感・成長を実感できるようなキャリアの構築に向けた支援を行っています。
事業戦略の転換や環境変化に迅速に対応できる能力開発に加えて、中長期的視点から自身が目指していきたいキャリアを考え、その実現に向けて主体的に行動できるよう、年齢の節目ごとに、年代別・階層別の「ライフタイムキャリアサポート研修」(LTCS)を実施しています。
●2024年度実績
LTCS50UP研修(55歳の全社員を対象) 381人(2024年度までの累計 773人)
LTCS50研修(50歳の全社員を対象) 325人(同 3,197人)
LTCS40研修(40歳の全社員を対象) 175人(同 2,041人)
LTCSA30研修(30歳前後の社員従業員を対象) 159人(同 196人)
LTCS入門コース(新入社員研修において実施) 377人
入社3年目面談
若年層の“早期戦力化”と“定着化”を目的に、新卒入社後3年目を対象に人事部による面談を実施しています。仕事や職場環境、自己のキャリア形成についての悩みを聞き、職場も含めたフォローをすることで、対象者の仕事や職場へのエンゲージメント向上を図っています。
②階層別研修
<管理職、リーダー>
社員が生き生きと働き成長していくために、職場での上司のマネジメントやコミュニケーションは非常に重要な役割を持っています。
管理職に対しては新任向けの課長研修や部長研修、1 on 1コミュニケーション研修のほか、外部と提携し、マネジメントスキルを学べる様々なコンテンツを提供しています。
管理職に任用する前には「マネジメント実践コース」の受講を必須とし、管理職層に必要な「ビジネス軸」および「行動軸」での役割を理解し、要件を身につけます。
「ビジネス軸」は経営戦略の目的を正しく理解し、社内外の環境変化に迅速、柔軟かつ適切に対応するスキルの研修であり、「行動軸」は戦略実現のために果たすべき役割を組織や個人に展開し、適材を配置することで、所属メンバーを育成し成長を支援するスキルの研修です。
また、選抜型研修としてF1、F2、F3研修を実施しています。
「F1研修」は次期役員候補が同レベルの候補者とともに経営者になるためのスキルを習得します。「F2研修」は部長・課長を対象に、次期事業責任者を担える人材となるための実践スキルを習得し、「F3研修」は、ビジネスの基礎を学び実際に事業提案する実戦形式の研修です。これらを通じて、グループ会社を含めた次世代リーダー育成が行われています。
<新入社員>
エプソンは、入社後の1年間を仕事に対する基本姿勢および仕事の進め方を習得するための教育期間と位置付けています。
入社後3週間は、以下の習得を目的に、国内グループ会社の新入社員を対象に集合研修を行っています。
・エプソン社員に期待される行動を理解し、実践する。
・「省・小・精の技術」の基礎であるものづくりの心構えと態度を学ぶ。
・チームで協力して活動することの大切さを実感する。
具体的には、エプソン社員の行動のよりどころである「エプソングローバル社員行動規範」を理解するための講義、「ものづくり実践研修」での実践訓練などを行います。また、研修期間を通して行われるグループ活動を通じて、チームで働くことの大切さや楽しさを学びます。
集合研修終了後は、配属先の育成リーダーのもと、職場でのOJTを通して仕事の進め方を学びます。育成リーダーには主に入社3〜5年目の社員が選ばれ、個々の新人に合わせた育成計画シートを作成し、1年間、二人三脚で独り立ちをサポートします。これにより新人だけでなく育成リーダー自身の成長も期待されています。
「新入社員」の肩書が外れる直前の翌年3月には、「フォローアップ研修」として再度集合研修を行い、お互いの成長を確認し合います。1年間を振り返りビジネスパーソンとしての基礎をより確実なものとし、一層の成長と貢献に向けた2年目以降の行動計画を考えます。

③スキル研修・リスキリング支援
社員が自律的にキャリアを形成し、成長し続ける意欲を支援するとともに、社員のスキルアップや変化への対応力強化を目的として、リスキリングへの取り組みを行っています。
OAスキルの基礎や論理的思考、対話力などのビジネス・コアスキルの習得をベースに、業務や職種に応じた専門研修を幅広く提供しています。
また、外部研修サイトの提供や資格取得や通信教育への補助により、個人の自己啓発による能力開発支援も行っています。
階層研修とスキル研修・リスキリング支援 体系図

若手社員の海外派遣
エプソンは、売上収益の8割以上、従業員数の7割以上を海外が占め、世界各国・地域に研究開発、生産、営業拠点を整備し、グローバルにビジネスを展開しています。世界各地の拠点において業務を経験し、また、海外での就労・生活を通じて異文化対応力を養うことにより、将来グローバルに活躍できる人材を育成することを目的として、若手社員を積極的に海外現地法人に派遣しています。(海外トレーニー制度)
COVID-19の影響で一時派遣を中止していましたが、2022年度から3年ぶりに派遣を再開し、23年度は27人、2024年度は26人を派遣しました。
海外トレーニー制度による海外派遣者推移
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|
人数 | 28人 | 22人 | 13人 | 1人 | 27人 | 26人 |
ローテーションと社内公募
エプソンでは、社員一人ひとりが自律的にキャリアを形成して成長し続け、内外の環境変化への対応力を高めるため、またバリューチェーンの効果的・効率的な運営に資するため、本人の能力や経験・知識の幅を広げるローテーションを重視しています。ローテーション率15%以上を目標に、昇格要件へのローテーションの織り込み、管理職の目標管理項目への追加、異動時教育の体系化などの施策を進めています。
また、社員の挑戦意欲に応えると共に、社員がさまざまな業務や職場を経験し、視野を広げ、スキルを高める人材育成の重要な手段として社内公募制度を位置づけ、取り組みを進めています。
ローテーション率
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | 目標値 | |
---|---|---|---|---|---|---|
率 | 7.3% | 9.0% | 10.0% | 10.1% | 10.1% | 毎年15%以上 |
社内公募実績
2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
---|---|---|---|---|---|
応募数 | 148 | 378 | 293 | 325 | 236 |
決定者数 | 12 | 217 | 201 | 176 | 133 |
目標管理
エプソンではすでに30年以上の長きにわたって「目標管理」制度を運用しています。全ての階層の社員全員が「目標管理」制度の対象となっており、上司と職場のメンバーが合意と納得のもとに目標を設定し、達成をフォローし、成果を振り返って、次期にはさらに高い目標に挑戦するサイクルを繰り返しています。この「目標管理」制度はOJTによる人材育成そのものであり、人材が成長することで組織・会社も発展するWin-Winの関係を築くサイクルになっています。
「お客様の期待を超える価値を創出する」人材を育成する「ものづくり塾」
ものづくり塾は、エプソンが創出する「お客様価値」をこれまで以上に高めるために、基本的な技術・技能の継承に加え、ものづくりの具体的な仕事のステップを実践により体感することで、幅広く多面的に業務を遂行できるような人材の育成にも取り組んでいます。具体的には、製品を構成するさまざまなパーツを自らの技術で作り上げるための部品加工技術(成形・プレス)の基礎や、製造ラインの高効率化を目指すために必要な技術(省人化・自動化など)を体得させる教育を行っています。
また、地域・社会貢献として地域企業の新入社員実践研修、中学生・高校生の企業体験、技能体験授業の指導や厚生労働省からの要請を受けた海外の技能評価システム構築のODA(政府開発援助)への専門家派遣も行っています。

全社生産戦略に対応できる人材育成の推進
近年、世界的な賃金上昇や人材不足に加え、地政学的リスク、自然災害、パンデミックといった不確実性の高い要因により、製造業は深刻な供給・物流リスクに直面しています。これまでのように、豊富な労働力や特定地域への集中生産を前提とした生産体制では、こうした急激な環境変化に柔軟に対応することが難しくなってきています。こうした状況を踏まえ、エプソンは「Epson 25 Renewed」の中で、自動化・デジタル化によるスマート工場の推進や、分散生産・近消費地生産の強化を掲げています。
このような柔軟かつ効率的で、グローバルなものづくりを実現するためには、ものづくりバリューチェーンを支える技術者の育成が重要となります。ものづくり塾では、技術者育成の各種研修を年間300回以上開催しており、装置製作に必要な機械製図・計測を始め、機械加工技能の習得を目的とした研修を実施しています。
また、自動化を推進する技術者の育成に向けて、圧空・電気制御や装置組立・調整の基本など要素技術を学ぶ「メカトロニクス基礎研修」をはじめ、より実践的な技術・技能を習得する「FAロボット研修」「画像処理研修」「メカトロニクス実践研修」といったカリキュラムを整備し、社員に学びの場と機会を提供しています。
また、国内での技術者育成に加え、製造拠点である海外現地法人においても、国内研修プログラムを基に製造・工機保全のリーダークラスの育成を展開しています。現地での教育に加え、海外出張が困難な時期に構築したリモート研修システムも活用し、必要な研修をタイムリーに提供しています。これらの取り組みにより、最適な人材育成を進めるとともに、分散生産などの全社的な生産戦略に対応できるよう各海外現法の工程管理レベルの向上を図っています。
技能五輪を活用した若手技能者の育成
ものづくり企業であるエプソンは、製造に必要な知識・技能を早期に身につけた「尖った技能者*1」を育成するため、技能五輪訓練を活用しています。技能五輪に訓練生が挑戦できるのは入社2年目から連続2回までとし、短期集中訓練で全国レベルの技能習得を目指すものです。出場種目は、実業務に応用可能な「精密機器組立て」「プラスチック金型」「メカトロニクス」「電子機器組立て」「自律移動ロボット」「ウェブデザイン」「時計修理」の7職種を選択し、毎年10~15人が全国大会へ出場しています。
技能五輪訓練生としてものづくり塾に配属された新入社員は、やすりがけ・鋸刃切断などで「ものづくり」の基本を体感するとともに、各職種別に機械・電気などの基礎知識を学びます。訓練は日常実施される職種別訓練と合わせ、体力強化・目標設定などを行う強化訓練を年3回行い、チームとして連帯感の醸成を図っています。
また、全国大会を想定し、技能五輪に参加する他企業との合同訓練会の実施や「機械加工技能士」「電子機器組立て技能士」「ウェブデザイン技能士」「時計修理技能士」などの国家資格取得も盛んに行っています。技能五輪訓練終了後、五輪訓練で培った基礎技能から商品づくりのための技能にシフトすべく応用訓練を実施し、事業部へ配転されます。受け入れ先からは、期待を超える活躍に高い評価を得ています。
*1 前例を突き破り革新的な技術やシステムを生み出す能力を持った技能者
2024年度教育実績データ
主なeラーニング受講者数(日本)
コース名 | 受講者数 |
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e-貿易管理教育_一般_全社員(2024) | 19,055人 |
e-環境基礎教育2024 | 20,988人 |
e-エプソンのコンプライアンス(2024) | 20,971人 |
e-情報セキュリティ基本編(2024) | 21,249人 |
e-調達基礎_調達遵法(2024) | 18,365人 |
e-ハラスメント防止教育(2024) | 20,834人 |
e-労働安全衛生教育_一般者向け(2024) | 18,416人 |
*2025年3月末までの受講者人数(セイコーエプソン(株)および国内関係会社)
階層別研修受講実績
コース名 | 対象者 | 受講者数 | 受講率 |
---|---|---|---|
新入社員入社時集合研修 | 新入社員 | 373人 | 100% |
C等級研修 | 新規C等級格付者 | 356人 | 98.0% |
SSF研修 | 新任SSF | 279人 | 93.6% |
新任課長研修 | 新任課長 | 135人 | 89.0% |
新任部長研修 | 新任部長 | 42人 | 93.3% |
* 階層別研修受講データは、セイコーエプソン(株)2025年3月末現在
* 未受講者は2025年度に受講予定
* SSFはシニアスタッフ(役職ではなくチームリーダーレベル)
研修時間
単位 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
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一人当たり研修時間 | 時間 | 20.9 | 21.5 | 34.2 | 27.7 |
総研修時間 | 時間 | 228,696 | 235,910 | 375,219 | 321,351 |
*セイコーエプソン(株)正規従業員の集合研修およびeラーニングの受講時間
2024年度助成金支給実績
種別 | 件数 |
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自己啓発資格取得 | 309件 |
自己啓発通信教育 | 256件 |
業務上の資格取得(全額助成) | 581件 |
(件数はいずれも、のべ件数)